中村卓哉×世界遺産沖ノ島│Web Gallery

2019年、私はNHK BS「ワイルドライフ」の撮影で、世界遺産沖ノ島で潜る機会に恵まれた。上陸が許されていない沖ノ島。その周囲の海へ入ることができるだけで貴重だ。撮影で潜った本数は64本。その全てが濃密であり、刺激的な体験だった。


「海の交差点」

そこにはいくつもの巨石が創り出す異空間が広がり、360度覆い尽くす魚群に一瞬でのみ込まれた。この日本いや世界中を探しても、こんな魚影に出会うことはなかなかないだろう。沖ノ島の海には南から黒潮の分流・対馬暖流がぶちあたり、北からは栄養豊富なリマン寒流が入り込む。海流の交差点、まさに魚(いお)沸く海である。


「終わりの見えないイサキの壁」

いくら泳いでも魚の壁のむこう側にたどり着けない。そんな経験は初めてだった。そこに凄まじい数のタカベの群れが川のようにフレームインする。海の中に雲が生まれるように、魚群(なむら)が次々と発生する。遠方に見えるイサキの群れのシルエットが、ジンベエザメのような形になった。群れは常にうごめき、刻々と姿を変えていく。エントリーからエキジットまで、全てがシャッターチャンスとなる。


「ジャンダルム 桜吹雪が舞う春の山」

島の西側の沖には、ジャンダルムという沈み瀬がある。潮流も速く険しいが、たどり着けばまるで桜吹雪舞う春の山。山肌には彩り鮮やかなソフトコーラルが咲き誇り、キンギョハナダイのサイズも他の海に比べてひと回り大きい。このようにフィッシュアイレンズを埋め尽くすことのできる海は、他には無いのではなかろうか。


「地球温暖化の指標」

温帯と亜熱帯の境目となるこの海は、地球温暖化の指標になりうる重要な場所となっているという。昔は海藻が多かったが、今はソフトコーラルが多く群生している。この景観が今後どのように変化し、生態系がどう変わっていくのか。今の沖ノ島の海を記録することは、今後の地球環境の移り変わりを予知する上で、とても意味のあることなのかもしれない。


「神話の世界へつながる海」

宗像三女神の長女である田心姫(タゴリヒメ)の御霊が宿る沖ノ島は、古事記や日本書紀にも登場する。旧約聖書による天地創造が世界の始まりなら、古事記は日本という国の礎を記す聖書のようなものである。その舞台のひとつである沖ノ島での潜水は、日本創造の歴史を紐解く壮大なアドベンチャーともいえる。


「Rocks 神の降り立つ小部屋 」

かつて陸地だったその場所には、まるで聖域のようなスピリチュアルな世界が存在する。ワイルドライフの撮影中に偶然見つけた海中の小部屋は、神の住まう窟のようだ。折り重なる巨岩の隙間から、1日のとある時間だけ射しこむ太陽の光。その奇跡の絶景を、ぜひその目に焼きつけてもらいたい。


「宗像三女の化身」

沖ノ島には3頭のミナミハンドウイルカが住み着いている。そのうち2頭は雌で、もう1頭の性別はまだ未確認である。もしかして宗像三女神の化身なのだろうか。畏敬の念を感じながらそっと海へ入ると、イルカたちは誘うように私のそばを回りはじめた。


「サーディンランを狙って」

8月下旬、回遊魚がイワシの群れを追い込む「サーディンラン」を狙った。STINGRAYの松本船長に海面の異変を探してもらう。いつでも海に飛び込める準備をして、その時を待つ。突然海面が波立った。「今だ!入って!」船長の指示が飛ぶ。すかさず飛び込むと、小型のヒラマサやカンパチがキビナゴの大群を追いかけまわし、縦横無尽に狩りをしていた。その光景はまさに戦場。キビナゴの群れは弾丸のようにビュンビュンと横切っていく。そこに回遊魚たちが何度もアタックを仕掛けるが、キビナゴ達は海底に敷き詰めた絨毯のように広がって、見事な防御陣形をとった。それを見たヒラマサやカンパチは狩りを諦め、海は再び平和な姿に戻っていった。


「クロマグロとの遭遇」

フォトレクチャー中にそれは起こった。なんとクロマグロの群れに遭遇したのだ。世界中にクジラやカジキ、ジュゴンなどを狙って撮影できる場所はあるが、クロマグロを狙える場所は無い。だがこんな偶然の出会いも必然だったと後に知る。私達が島のそばで潜っている最中、松本船長が沖合にクロマグロを探知、その群れを私達の方へ追い込むよう船を走らせ、ガイドの木村さんはそのエンジン音と潮流の向きからマグロの進路を予測、ダイバーとマグロ双方の群れを鉢合わせたのである。


今年もゆるかたフォトセミナー開催

そんな潜水ガイド木村さんと松本船長の強力タッグが生み出す奇跡の瞬間を、今年も「ゆるカタ」の二人が撮影しに行きます。ぜひ、一緒にフォトジェニックな沖ノ島の海が生む数々のドラマを激写しましょう!


中村卓哉(Takuya Nakamura)

水中写真家。10歳の時に沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い海中世界の虜となる。
ライフワークの辺野古の海へは17年以上撮影で通い続けている。
海中の世界の命のドラマをテーマにコラムなどの執筆や講演、カメラメーカーのアドバイザーなどもおこなう。
テレビやラジオ、イベントへの出演を通じて、沖縄の海をはじめとする環境問題について言及する機会も多い。

パプアニューギニアダイビングアンバサダー
公益社団法人 日本写真家協会 会員

<写真集>
『海の辞典』(雷鳥社)
『わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山|川|海』(偕成社)
『パプアニューギニア 海の起源をめぐる旅』(雷鳥社)
『辺野古ー海と森がつなぐ命』(クレヴィス)



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