九州の黒潮の海を潜る│ディスカバリークルーズ

地球上でもっとも巨大なエネルギーである"海流"。その最大勢力である黒潮は、太平洋の西の海で生まれ、南半球の国々を経由しながらパワーを増し、日本列島・九州を直撃します。そこから両腕を伸ばすように、南北に進路を分け、3つの海域を通過します。ひとつは九州北方の「玄界灘」、ひとつは九州南方の「薩南トカラ」、もうひとつは九州西方の「西海」です。


ディスカバリークルーズ、これまでの軌跡

2005年、私たちチームは九州の南、鹿児島枕崎に拠点を置き、薩南三島での潜水を開始しました。動機は「まだ誰も潜っていない海だから」という単純な好奇心でしたが、その海に広がる不思議な光景、海が赤や白に染まる水中オーロラや、海底から熱水が湧き出す水中温泉、高層ビル群のような切り立った岩々や沈船などは、私たちの好奇心を冒険心へと高めていきました。


秘境トカラ列島の探査クルーズへ

薩南三島から更に南へ下り、トカラ列島へと探査エリアを広げたのは2010年。この頃からフェリーなどの公共機関ではなく、専用のクルーズ船で海図を広げて潜水計画を練る、現在のスタイルが定着しました。猛烈に速いトカラ潮流下での潜水は困難を極めましたが、大型魚の群れや狂暴なイタチザメをはじめ、マンタの北限生息域を発見するなど、探査成果を上げていきました。


九州北部 玄界灘・神宿る島の探査はじまる

2015年には福岡糸島に拠点を作り、高速クルーザーを駆使して玄界灘での探査を開始。人が立ち寄れない神宿る島・沖ノ島はのちにユネスコ世界遺産に登録され、私たちチームの潜水活動にも耳目が集まりました。2019年にはNHKからの依頼で、水中写真家・中村征夫さん率いる沖ノ島水中撮影班を結成。ロケ中に海底の洞窟を発見したり、クロマグロ群の撮影に初めて成功するなど、そのドキュメントの模様は全国放映されました。


これまで九州の海が手つかずだった理由

沖縄や伊豆の美しい海は、古くからレジャーダイビングのメッカでしたが、九州の海はほとんど手つかずでした。海流が速いため潜水が難しく、荒れた外洋へ出るため特殊な船舶が必要といった様々なハードルが、先人たちの挑戦を妨げていたと思われます。私たちチームはこれらをひとつひとつ解決し、互いに信頼関係とスキルを高めていきながら、常に新しいチャレンジへ向かっています。


新たな挑戦・西海ディスカバリークルーズ

薩南トカラ、玄界灘に続き、いよいよ第三の海域『西海』への挑戦が、2021年から始まります。古来日本の海は京都から見て東と西に呼称があり、駿河湾を有する東の果てを"東海"、九州長崎の西の果てを"西海"と呼びました。西海ディスカバリークルーズは、福岡糸島を出港し玄界灘・壱岐水道・平戸島・五島列島へと抜ける西海航路を通り、様々な未開の瀬(マンゼラ・シャクシ・ヒサゴ)を経て、九州最大の沈み瀬・高麗曽根を目指す、およそ120海里(約200km)の冒険航海です。



「冒険の瞬間」がテーマのTシャツ発売

これまで潜水撮影された膨大な数の写真から、これぞ冒険の瞬間と言わしめる作品を厳選し、その撮影ストーリーと共にTシャツにプリントしました。デザインやカラー、生地や縫製など細部にこだわっています。08/10発売の第1弾/4作品を以下ご紹介します。


dct01│玄界灘サーディンラン│越智隆治

(和訳)TAKAJI OCHIは、世界中で海洋生物を撮影する、日本のプロカメラマンだ。2018年に彼は福岡の玄界灘で撮影を行なったが、本当は最初、台風の影響で潜れないだろうと思われていたが、天候が回復したので、小呂島でダイビングを行なった。彼の乗るダイビングボートの近くで、海面が大きく膨らんで、おそらく大きな魚の群れが、小魚たちを捕食しているシーンに出くわした。彼は即座に、水中カメラと水中マスクを身に着けて、海中に入った。彼は、船長から方向指示を出してもらい、そちらへ泳いでいくと、水中に無数の魚の群れを発見し、その魚がヒラマサだと分かった。ヒラマサたちは最初、彼を取り囲み、旋回していた後、元来た方向へと戻って行った。彼がその魚たちの後をついて泳いでいくと、黒い巨大な生き物を発見した。「あれはイワシの群れだ!」そこには、ヒラマサの群れに周囲を包囲され、追い詰められて、同じ場所でぐるぐると旋回をするイワシの群れがいて、まるで大蛇のような動きで旋回を続けていた。水中の視界が悪かったので、周りにサメがいないかを警戒しながらも、さらに魚に接近を試みた。すると、イワシを取り囲んでいたヒラマサが、またこちらに向かってきて、一瞬だけイワシたちが逃げるチャンスが訪れた。イワシの群れは、それ自体が意思を持った一つの生き物のように、縦長にのびていったかと思うと、そのまま渦を巻きながら海中へと消えていった。ヒラマサたちも、その後を追った。彼はその様子を夢中で撮影した。後に残ったのは、無数のイワシの鱗。その様子はまるで、満点の星空か、サンゴの産卵直後の海中のようだった。


dct02│薩南鬼界カルデラ│鍵井靖章

(和訳)YASUAKI KAGIIは、最も美しい水中写真を撮影する日本のプロカメラマンのひとりだ。この写真は2019年に、彼が日本の鹿児島の南方沖にある 薩摩硫黄島の海中で撮影したものだ。この島は、今から7300年前に巨大噴火を起こした、世界最大級の海中カルデラの一部であり、島の中央部にある山は今も噴煙を噴き上げている。この海域では、海中の至るところで温泉の成分が湧き出ており、その影響によって海が様々な色に変化し、まるでオーロラのような現象が、水中に現れる。鉄分は赤色に、アルミニウムは乳白色に、といった具合だ。この写真を撮影した日の海水は、多くの鉄分が含まれており、それによって海中の成分が酸化し、海の色が赤色に染まっていた。彼は、ダイビングボートの上から海の様子を確認し、水中カメラをセットして、海水をかき混ぜないよう、慎重に潜水した。赤く染まった海水は極めて透視度が低く、まるで漆黒の闇の中を進んでいるような感覚になったが、あらゆる過酷な環境での水中撮影を経験してきた彼は、心を静めて慌てることなく、ベストな撮影の瞬間のことだけを考えていた。しばらくして漆黒の海を抜けると、徐々に視界が開けてきたので、彼が海面の方向を見上げると、そこには赤色の海水と、そこに差し込む夕日の光が、見事な赤錆色を生み出していた。さらに、そこへ仲間のダイバーが沈降してくる姿を見つけたので、彼は即座にこの写真の構図を決め、カメラの向きを縦向きに変え、ゆっくりと確実にシャッターを切った。


dct03│イルカとダイバー│Yukako Yokota

(和訳)YUKAKO YOKOTAは、世界の様々な海を撮影し、また日本各地の海の魅力を知る、活動的な水中カメラマンだ。彼女は2019年に、福岡の玄界灘にいた。玄界灘は海の自然が守られており、海の生き物たちも多種多様で、魚影も濃い。彼女はそこに3頭のイルカが住み着いたことを知り、水中撮影に向かった。最初はスキューバダイビングを行なったが、イルカはダイバーたちを警戒したのか、なかなか姿を現さない。しかし、ダイビングボートで島の周りを航行していたら、そのエンジン音に興味を持ったのか、イルカたちが近づいてきた。彼女は、イルカたちに警戒されないよう、スキューバの器材を使わずに、スキンダイビングでの撮影を試みた。船上から水中へ身体を入れるときも、なるべく水面を揺らさないよう、静かに、慎重に潜水した。すると、イルカたちは喜んだ様子で、彼女を囲むようにして泳ぎ始めた。イルカたちは、彼女と、彼女が持つ水中カメラに興味を持ったようだった。しばらくして、仲間のダイバーのひとりが潜水し、彼女の横に下りてくると、イルカたちはそちらに顔を向けたので、彼女はシャッターを切った。それからは、イルカたちはもう彼女を警戒しなくなり、まるでお互いの心が通じ合ったように感じた。彼女は、この野生のイルカたちの歓迎を受けることに成功し、またこれは、彼女にとって初めての経験となった。


dct04│タイガーシャーク│中村裕一

(和訳)HIROICHI NAKAMURAは、世界中の海で主にサメを撮影している、冒険的なダイバーだ。彼はそこにサメが いると聞けば、どこへでも出向くが、とくに日本の南部にあるトカラ列島には、よく通っている。なぜならそこには、タイガー、シルバーチップ、シルキー、ニタリザメなど、あまり目撃例のない希少なサメを撮影するチャンスが、多く訪れるからだ。彼が、このタイガーシャークを撮影したのは、トカラ列島の中之島。「摩天楼」と呼ばれるダイブサイトの沖合だ。この日もサメを探してダイビングを行なっていた。どこまでも抜けるブルーウォーターの海には、すさまじい速さで潮が流れており、彼はまるで空を飛んでいるかのように、水中を流されていた。これは非常に難易度の高いダイビングだが、このように潮の速い海でなければ、彼の望むサメを撮影することはできない。彼が水中カメラを構えて、周囲に注意を巡らせていると、彼の視界の下の方に、白い生き物が、徐々にこちらに近づきながら揺れいていた。「見つけた。タイガーだ」眼をジッと凝らす。間違いなく巨大なサメの頭だと認識する。サメは頭を彼に向けたまま、明らかにこちらに興味を持って一直線に近づいてくる。彼とサメとの間を遮るものは、何もなかった。彼はしっかり呼吸を整えて、水中カメラを身体の前に突き出した。タイガーはそれを認識しつつも、速度をゆるめずに近づいてきた。彼はサメを十分に自分に引き付けて、最高のタイミングでシャッターを切った。するとタイガーは、彼のカメラの前でゆっくり旋回し、連続するストロボの光を浴びながら、ゆっくりと深淵へと姿を消した。



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